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某日 本庁から屯所に帰ってきたのは午後五時過ぎだった。 屯所の前を万事屋がスクーターで通りかかったのを見かけて俺は声をかけた。 「万事屋じゃないか」 スクーターを止めて万事屋は俺を見る。相変わらず死んだ目してんなァ。 「ん? なんでゴリラがこんな所にいるの。放し飼いか? つーかなんで俺に話しかけてくんの」 「ゴリラじゃないからァ!!」 ムキになって言うと俺は万事屋の背中に寄り添っている可愛い女の子に目を向ける。 「ずいぶん可愛いコ連れてるじゃん。同伴か?」 「馬鹿言うな。弥生は俺の愛する嫁さんだ」 ――ぬヮにィィイ!!? 「嫁ェェエ!!? 何それ、どういうことよ!? 俺を差し置いていつ結婚したんだよォォォ!」 「出逢った瞬間だ」 万事屋の死んだ目がりりしく変わった。 「出逢った瞬間ン!? 意味わかんないだけど!」 やり取りをしていると女の子がクスクス笑った。 その笑顔に俺はなんだか懐かしい感覚がした。 「あ、あの初めまして俺は近藤勲。真選組の局長です」 「何赤くなってんだよゴリ」 「ゴリじゃないから!」 万事屋に不機嫌そうに言われて俺は言い返す。 女の子はスクーターから降りると俺を見つめてきた。 か、可愛い。本当可愛いよこのコ。 「局長さんですか。初めまして、弥生です。すぐ近くの大江戸ストアでバイトしてます。土方さんや総悟さん、退さんにはお世話になってます」 「そうなのか。真選組は荒っぽい奴が多いが気のいい連中ばかりだ。これからも仲良くしてくれ。もちろん俺ともね、よろしく頼む」 「こちらこそ」 弥生さんのフワリとした笑顔に俺はドキッとした。 ――そうだ、この笑顔。 「弥生、ゴリの言うことなんて無視でいいから。そんな近くに寄るとゴリ臭くなっちまうぜ。早く乗れ」 「ゴリじゃないからねェエ!?」 弥生さんは俺にお辞儀すると万事屋の後ろに乗って去っていった。 屯所に入った俺は隊士に挨拶されながらトシの副長室へ向かった。 「トシ、入るぞ」 襖を開けた時――総悟もこちらへやってきた。 「お帰りなせェ近藤さん」 「ただいま」 部屋に入って俺は腰を下ろす。 総悟も入ると襖を閉めた。 「お疲れ近藤さん。松平のとっつァんの様子は?」 「変わらずだ。それより聞いてよォ! 今そこで万事屋に会ったんだけどさ、アイツ結婚したんだって!」 二人は無表情。 ――あれ、ノーリアクション? 知らなかったの俺だけか? 「弥生さんメチャメチャ可愛くてさ。大和撫子っていうの? あんな可愛い嫁さん俺も欲しいなァァ」 「近藤さんも頑張ってくだせェ」 「ま、今の調子だと難しいだろうけどな」 「俺はお妙さんを諦める気はねェからな!! チクショー万事屋に負けてたまるかァァ!!」 お妙さんに対する想いが俺は更に膨れ上がった。 明日も猛アタックしに行くぜ ![]() 「あ、それでよ。弥生さんの雰囲気とか笑顔を見た時、似てるって思ったんだ」 「誰に?」 「ミツバ殿に」 トシと総悟が目を見開いてうつむく。 ――しまった。無神経だったか。 ミツバ殿が亡くなってからまだ月日は浅い。 「す、スマン。もう少し気を遣うべきだった」 「俺も思いやしたぜ」 「……俺も」 「そうなのか?」 やはり二人も思ったのか。 「弥生の声も、なんとなくだけど姉上に似てる気がする」 「そうだな」 ああ。言われてみれば、そうかもしれねェな。 |
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