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弥生の続き 視線を感じて弥生を見ると目が合って、顔を背けた弥生の綺麗な栗色の髪が揺れた。 白い首筋が覗いて見えたのは――幾つも散った赤い痕。 見た瞬間――胸がズキッと痛んだ。 なんだこれ。 スゲェ胸が痛ェ。痛くて、苦しい。 ……わかってたじゃねェか。 コイツは万事屋の女。 弥生にミツバを重ねて、万事屋の女と知ってて惚れて傷ついて。 ……馬鹿みてェ。何やってんだ、俺は。 俺の中で何かがスゥーと引いていく感覚がした。 「土方さん? どうかしましたか?」 「いや、なんでもねェ」 しっかりしろ俺。 ――そうだ、弥生にあの話しねェと。 「弥生、近藤さんから聞いたか? 女中の話」 「女中?」 首を傾げる弥生にまだなんだと思う。 「ああ、ウチで女中やってみねェか」 「えっ?」 「近藤さんがお前の働きぶりに感心しててな。俺も前から仕事熱心だと思ってたし、是非ウチで女中をやってほしいと言ってるんだ」 「近藤さんがですか」 「ああ。お前の頑張ってる姿を見ればウチの隊士共の士気も上がるしな。こっちから頼んでるんだから給料も弾む。住み込みは万事屋が許すわけねェから通いでいい。考えてみてくれねェか」 「わかりました。早めにお返事しますね」 「よろしく頼む。それと……これ受け取ってくれ」 俺は持っていた風呂敷の包みを弥生に差し出した。 弥生はまたたきして受け取る。 「なんですかこれ」 「贈り物だ」 「――え、あたしに?」 「飯の礼だ」 「そんな、お礼されるほどのことでは」 「受け取ってくれ。お前に似合うと思うんだ」 「……開けてみてもいいですか?」 「ああ」 風呂敷を開けて弥生は真紅の着物を見ると目を見開く。 「気に入ってくれたか?」 弥生は風呂敷を縛り直すと俺に突き返してきた。 「こんな高級な品、受け取れません」 「何故だ」 「そ、それにあたしには似合いません」 「そんなことねェッ! 俺は人を見る目はあるつもりだ。今までいろんな女を見てきたが、この着物を目にして袖を通すに相応しいと思ったのはお前なんだ」 「そんな、買い被りすぎです」 「――なら、条件がある」 「なんですか?」 「その着物を身に着けた姿を一目見せてくれ。俺の目に狂いはねェと証明してやる。それと、また飯食わせてくれねェか」 「…………はい、わかりました。ありがたく受け取らせていただきます。この着物着たらあたしと会ってくださいね」 弥生がフワリと笑う。 ――ああ、またこの笑顔だ。 「是非」 お前に溺れていく。 なァ弥生、いいのか? 教えてくれよ。 抑えが効かねェんだ。 俺はお前に惚れていていいのか? 教えてくれよ…… |
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